投稿日:2008年1月18日|カテゴリ:院長ブログ
 睡眠時無呼吸症候群は、昼間の作業効率の低下や事故をもたらす要因となるばかりでなく、恐ろしい 心不全 や 脳梗塞 の原因ともなるので、サイレント・キラー(Silent Killer…静かな殺人者)とも呼ばれています。 
 もうこの病名が世間に知られるようになって十年以上になりますが、未だ、検査もされず、治療に結びつかない患者様がほとんどのようです。この病気は眠っている間に起こるので、患者様が自分自身で気付くことは極めて稀だからでしょう。
 診察の動機のほとんどは、配偶者・家族による気付きに負っているわけです。睡眠時無呼吸症候群で正確に診断治療が行われている症例の数は、全症例のほんの一部に過ぎないというわけです。

 2003年2月26日、睡眠時無呼吸症候群に罹患していた新幹線運転手が居眠り運転するという事件が生じて以来、睡眠時無呼吸症候群という病気の存在と、その重要なサインが夜間の【いびき】だということがマスコミ等を通じて広く知られる様になりました。
 
 ときどきまたは、たまにいびきをかくというレベルでなら、おそらく人口の半分以上がいびきをかいているといえるのではないでしょうか。毎晩かならずいびきをかく(常習性いびきの)人の数も、全世界的にみれば、4割に達するといわれています。日本人に対する最近の調査によれば、常習性いびきの割合は、男性の21%、女性の6.1%に及び、年代別では、男女ともに50歳代にピークがあります。
 
 男性の方がいびきをかく割合が多い(女性の約3倍以上)理由としては、女性ホルモン(特に、黄体ホルモン)が呼吸筋(上気道の筋肉や横隔膜、肋間筋等)活動を促進する効果があるためだと考えられており、いびきをかく人の男女差は、女性の閉経期以降に小さくなります。したがって、中高年になると夫婦そろっていびきをかくという現象が珍しくなくなります。

 寝不足や疲労したときにいびき音が大きくなる理由は、上気道筋活動が抑制されるため。また、アルコール、睡眠薬にも上気道筋活動を抑制する作用があるので、飲酒したり睡眠薬を服用したときにいびきが大きくなるのはこのため。
 いびきというのは、いろいろな原因から起こる、いわば生理的な現象ですし、少なくとも、たまにかくいびきには全く問題はありません。
 しかし、いびきが常習化し、さらに音がだんだん大きくなっていくにつれて、ノドの狭窄、陰圧化(これによって、呼吸運動に際してノドが引き込まれるような感じになる)が強くなると、自律神経系や循環動態にも影響が及ぶ上に、ノドへの刺激で眼が覚めやすくなります。
 これがさらにひどくなると、無呼吸(ノドが詰まって呼吸が止まるもの)や低呼吸(呼吸量が正常呼吸の二分の一以下になるもの)が起こるようになり、前記の悪影響が顕著になっていくのです。

 いびきが途切れたり(=呼吸が止まっている)、突然爆音のような大いびきをかく(=呼吸が再開するときに、いびき音が最も大きくなる)ようになったら、要注意です。

 睡眠時無呼吸症候群では、昼間の居眠りが多くなること、高血圧の有病率が上昇することが知られていますが、常習性いびきが存在するだけでもこれらの頻度はやや上昇するとされています。睡眠時無呼吸症候群のために高血圧を生じている場合には、これを治療するとかなりの確率で血圧も正常化します。
 また、無呼吸の影響で不整脈を生じることも珍しくありません。ホルター式の携帯心電計で24時間心電図をとって、夜間のみに不整脈が集中していることから無呼吸が発見されるケースもあります。

 睡眠時無呼吸症候群の診断を行う上では、夜間睡眠中の呼吸・脳波・眼球の動き・筋活動・心拍などの生体現象を連続して記録するPSG検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)が必要になります。

 本症候群の患者様の終夜睡眠ポリグラフィ記録をみると、頻発する無呼吸・低呼吸のために深い睡眠は著しく少なくなっており、動脈血の酸素飽和度が低下しています(つまり、酸欠状態になっています)。

 睡眠時無呼吸症候群の重症度は、単位時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数によって定義されることが多く(無呼吸・低呼吸指数といいます)、この値が15回以下のものは軽症、15~30回程度のものは中等症、30回以上(すなわち、一晩に換算すると200回以上)のものは重症と考えていいでしょう。

 治療法としては、夜間眠るときに呼吸器と接続した鼻マスクを装着して、ここから空気を送り込んで、ノドが閉塞しないようにする鼻腔持続陽圧呼吸治療(CPAP=シーパップ)がもっとも有効です。わが国では医療保険適応でのレンタル使用が可能となっております。
 この機械は一見ものものしく、健常者ではこれを装着するととても眠りにくいのですが、睡眠時無呼吸症候群で夜間浅眠傾向かつ日中眠気の強い人では、この治療によって無呼吸が抑えられると、深い睡眠が増加し、睡眠感が改善します。CPAP治療は、圧レベルさえ調節すれば、無呼吸をほとんど消失させることができます。-----ただし、いわば空気によるノドのつっかい棒ともいえるもので、上気道閉塞原因を取り除ける根本的治療ではないので、中止すると治療前の状態に戻ってしまうという欠点があります。

 CPAP治療は、マスク装着の不快感や、機械使用のわずらわしさのために、どうしても続けられない人(患者さんの1~2割)がいますし、前述した無呼吸低呼吸指数が20未満の患者さんでは、健康保険適応になりません。

 そのような場合は、下顎を4~7mmくらい前方に移動させることができるマウスピースを寝る前に装着して(口に含んで)、ノドを広げて、睡眠中に閉塞しないようにする治療を行うこともあります。
 一般的には、まず鼻腔持続陽圧呼吸治療(CPAP=シーパップ)を試してみて、これに苦痛があり長期使用が困難な場合には、マウスピースを試みるのが良いと思われます。

 以上のような治療の有効性はもちろんですが、根本的には、太っている人の場合はまず”減量”する必要があります。ただし、肥満は本症候群発病の原因としてよりも発病の促進因子となっている場合が大半なので、やせることで無呼吸数は減少するものの、完全にはなくならない可能性が高いのです。

 また、前述の通り、アルコールや睡眠薬は上気道筋の緊張をゆるめ、無呼吸を悪化させる作用があるので、睡眠時無呼吸症候群の人はこれらを避けるべきですね。
 
夜間熟睡できない、周期性のいびき、寝ても寝ても昼間眠たい人は、一度、当クリニックで検査をなさってください。少しの“気付き”が大きな合併症を予防します。

長々と書きまくってしまいました!たらーっ

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