投稿日:2007年9月1日|カテゴリ:院長ブログ
またしても奈良県で、不幸なことが起きました。医療に関連する抑制を続けた結果がじわじわと表出しており、これから崩壊が進行していくともっと悲惨な事件も起こってくることでしょう。
そもそも、産科医の足らない状況で、さらに産科医が叩かれ、ますますモチベーションも下がるようでは、産科医になろうとする医者を育成するなんて無理な話でしょう。

29日午前5時10分ごろ、大阪府高槻市富田丘町の国道171号交差点で、奈良県橿原市の中和広域消防組合の男性救急隊員(32)が運転する救急車と、同府茨木市の配送業男性(51)運転の軽ワゴン車が接触した。救急車は約2時間半前に橿原市の妊娠3カ月の女性(36)を乗せたが、奈良県内で受け入れ病院がなく、高槻市内の病院に運ぶ途中だった。別の救急車に乗り換え、約35分後に病院に運び込まれたが、流産が確認された。
 高槻署や同消防組合によると、赤色灯をつけサイレンを鳴らして赤信号の交差点を直進していた救急車の後部に、左から来た軽ワゴン車が接触。双方の車体にすり傷がついた。けが人はなく、流産と事故との関係は不明という。
 女性は腹痛などを訴えて午前2時45分ごろ、知人が119番通報。救急車は約10分後に女性宅に到着した。妊娠の可能性が高いため、救急隊員が消防組合本部を通じて、インターネットの県医療情報システムで産科の急患を受け入れられる県内の病院を探すとともに、奈良県立医大病院にも直接電話で問い合わせた。
 同医大病院が処置中であるなど、県内で病院が見つからなかったため大阪府内の病院に電話をかけた。しかし、満床や処置中などで受け入れ病院はすぐに見つからず、9カ所目で高槻市の病院が受け入れ可能と判明した。午前4時20分ごろ、橿原市内の女性宅を出発。病院まで約20分のところで事故が起きたという。
 奈良県では昨年8月、分娩(ぶんべん)中に意識不明になった女性(当時32)が奈良、大阪両府県の19病院で受け入れを拒まれ、8日後に死亡した問題があった。
 事故を起こした救急車が所属する同組合橿原消防署は「搬送手順に問題はなかった。大型病院に受け入れてもらえなければ県外へ搬送せざるを得ず、日によっては今回程度の時間がかかってしまう」と説明している。

11病院拒否 搬送3時間 奈良の女性流産 2007年8月30日 朝日



この事件に対し、奈良県立医大が
当日の産婦人科当直の状況をホームページに公開しています。
http://www.naramed-u.ac.jp/~gyne/2007.08.28.html

以下、奈良県立医大のホームページよりコピー

今般の妊婦救急搬送事案について

 去る8月29日、救急搬送中の妊婦さんが不幸にも死産にいたりましたことについて、
誠に遺憾に感じております。
 今回の事案につきましては、マスコミを通じて、さまざまな報道がなされておりますが、
当病院の産婦人科における8月28日から29日にかけての当直医師の勤務状況や
当病院と救急隊とのやり取りについて調査しましたので、その結果を公表いたします。


平成19年8月28日の当直日誌記録より

(産婦人科当直者 2名)

時間 対応内容

8月28日(火)     夕方から抜粋

19:06       妊娠36週 前回帝王切開の患者が出血のため来院、診察後に帰宅
19:45       妊娠32週 妊娠高血圧のため救急患者が搬送され入院、重症管理中
09:00~23:00  婦人科の癌の手術が終了したのが23:00、医師一人が術後の経過観察
23:30       妊娠高血圧患者が胎盤早期剥離となり緊急帝王切開にて手術室に入室
23:36~00:08  緊急帝王切開手術
00:32       手術から帰室、医師一人が術後の処置・経過観察をする。
          重症のためその対応に朝まで追われる。妊婦の対応にもその都度応援する。
          当直外の1名の医師も重症患者の処置にあたり2:30ごろ帰宅

8月29日(水)

02:54       妊娠39週 陣痛のため妊婦A入院、処置
02:55       救急隊から1回目の電話が入る
     (医大事務当直より連絡があり当直医一人が事務に返事) 
     「お産の診察中で後にしてほしい」、そのあと4時頃まで連絡なし
03:32       妊娠40週 破水のため妊婦B入院、処置 (これで産科病棟満床となる)
04:00       開業医から分娩後の大量出血の連絡があり、
          搬送依頼あるが部屋がないため他の病棟に交渉
04:00頃      この直後に救急隊から2回目の電話が入る 
     「今、当直医が急患を送る先生と話しをしているので後で電話してほしい」旨、
     医大事務が説明したところ電話が切れた
05:30(病棟へ)  分娩後の大量出血患者を病棟に収容 
     (産科満床のため他の病棟で入院・処置)
05:55       妊婦Aの出産に立ち会う。
          その後も分娩後出血した患者の対応に追われる
08:30       当直者1名は外来など通常業務につく、
          もう1名は代務先の病院で24時間勤務につく

僕も救急病院勤務を経験したものとして、このような過酷な日常勤務をされている先生方が責められるのは、まことに遺憾です!
誰がいったい悪いのか!? 国は、厚労省は、そもそもはそこが一番の問題では?

4 Responses to “奈良県の妊婦死産の事件”

  1. ぽんにゃん より:

     ヌル科稼業をしている者ですが全くの同感です。しかし私は政府や関係省庁、(あえて加えるならば)マスコミをただ批判すればよいとは思いません。医療におけるリスクは全て適切な処置により回避可能であり、それが回避できないのは処置者の怠慢もしくは未熟であるとする風潮が正されるべきであると考えます。蟹が己の殻に合わせて穴を掘るのと同じく、国民は己に見合った政府を持つものです。

  2. 吉岡 より:

    ぽんにゃんさん、初コメント有難うございます。
    政府といえども同じ日本人であり、医者といえども同じ人間です。片方が一般人で、片方が聖人であるはずも無い。同じ人間なんですよね。事の善悪も人間の勝手に決めたことであり、マスコミも責める対象がコロコロ変わる。何が正しくて良い事なのか、、、所詮は人が手前の都合のいいように取り決めた事愉であるとすれば、今回のこの事件も、地球温暖化を作り上げて自然の猛威に返り討ちにあっている人間が反省すべきように、もっと根本から掘り下げて考え、是正していくべきなのだろうと考えるわけです。 抽象的な文言になり申し訳ありませんが、やるせない世の中から脱却したいと願う今日この頃です。

  3. ぽんにゃん より:

     早々のコメントありがとうございます。
    私も私なりにこのやるせない世の中から脱却したいのはやまやまですが諸般の事情のためその辺は思いとどまっています。また、吉岡さんの様な方にはこれからもご教示いただく点も多々あろうかと思いますので今後ともいろいろとご教示いただければと思います。

  4. 吉岡 より:

    ぽんにゃんさん、こちらこそまだまだ若輩者の視野の狭い小生に、どうぞ厳しいご指摘をこれからもお願いします!
    かなり打たれ弱いですが!(^_^;)

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